たわしの帖

やれることをやってみるブログ

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甘い絶望を描く『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet』

 ハタチぐらいのとき「小説 オススメ」で検索すると伊坂幸太郎の『アヒルと鴨のコインロッカー』、梨木香歩の『西の魔女が死んだ』、桜庭一樹の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet』をやたら推されたことがあった。

 海外小説ばかり広く読んで、国内小説は山田悠介と乙一が中心だった10代。勧められるまま前2作品は読んだけれど、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』だけは読めずにいました。理由は単純──タイトルから受ける印象がイマイチだったからです。

 砂糖菓子の弾丸って……女の子のサバイバルミステリー? 魔法少女系? 『ルー=ガルー*1』みたいなのだったらどうしよう! と思って積んでいた本書。

 いやいや、読まず嫌いはいかんよ。『少女七竈と七人の可愛そうな大人たち』の作者だし、ラノベ作家から一般文芸作家へシフトチェンジしたきっかけみたいな作品なんだから!

 ──と考え直して読んでみれば、あら不思議。なんとも言い難い悲しさと辛さでいっぱいになってしまった。誰ですか、魔法少女系とか言った奴。……私だ。

*1:京極夏彦著『ルー=ガルー ー忌避すべき狼』。全753ページ中、半分まで進んだところで積んでいる。

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1月に読んだ本をまとめてみた【読書術・ビジネス・エッセイ・小説】

 月10冊、本が読めるようになれたらいいなぁ……と夢物語を浮かべてしまう束子です。

 わざわざ“夢物語”と称した理由は24時間まるまる本の虫になるわけにはいかず、そのうえ遅読家ゆえに「月10冊」は理想論に近いと考えているからです。不可能ではないけれど、なかなかに難しい。

 それでも出来るだけたくさん本を読みたい私。今年から<読書目標>をつけるようになりました。今回は目的などを含め、備忘録としてまとめておきます。

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ディジョンマスタードを食べ比べてみた

 読んでいる本に食べ物が出てくると、なんとなく「私も食べてみたいなぁ」という気持ちになる。食欲が湧くのとは違う。「本当にそういう味がするのかしら」と好奇心が湧いて、ちょっとだけ味わってみたくなるのです。

 この好奇心は買い物中にも顔を出すもので、「そういえば、あの本に載ってたな」と唐突に思い出します。現に、輸入食品を扱うスーパーでフランス産のマスタードを見かけた際には『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』を思い出した。

 その夜のサラダは、セン切りのキャベツ、うす切りのきゅうりに玉ねぎ、それにかいわれ菜が入っていた。「マスタードのおいしいのを使うのがコツ」だそうだが、フランス人はマスタードが好きである。ディジョンという町は、マスタードの町といわれるが、マスタードの大工場があり、世界各国に輸出している。このディジョンのマスタードは味がよくて、一度使ったら他のものは使えなくなってしまう。
石井好子著『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』P.166より引用

 一度使ったら他のものは使えなくなってしまうなんて……本当だろうか。というより、マスタードにこだわったことがない違いを考えたこともなかった

 ディジョンマスタードとは、どんなものかしらん。──興味が湧いたので、2つのディジョンマスタードを実食。ついでに比較してみました。

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『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』をおいしく読んだ

巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(以下『巴里』)の姉妹本『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』(以下『東京』)を読んだ。

『巴里』の後、「暮しの手帖」で執筆していた5年間をまとめた本書。相変わらず美味しそうなにおいが溢れる内容でした。お腹の虫が何度グーッと悲鳴を上げたことか……数えてないので分かりません。料理エッセイではなく飯テロエッセイとするべきである。

 姉妹本なだけあって『巴里』と繋がっている部分に「おっ」とさせられる。そして著者・石井好子女史の変化や、前作を書くに至った経緯なども記されていて興味深い一冊となっていました。

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牡蠣嫌いが『レモ缶ひろしま牡蠣』を食べてみた

 どうも、牡蠣(かき)嫌いな束子です。

 個人の嗜好はさておき、牡蠣が旬のピークを迎えております。スーパーマーケットの鮮魚コーナーを覗いてみると、広島県産の牡蠣のパック詰めを見かけることも多いのでは。

 今日は当ブログでは初めて「食べてみた」記事を書いてみようと思います。記念すべき第1回目はヤマトフーズ株式会社の『レモ缶ひろしま牡蠣』です。

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 いわゆる“缶ツマ”と呼ばれるであろう一品。「食べてみる」行為*1も食材も苦手な商品のレビューですので、褒めちぎったりはしません。率直に書き綴っていこうと思います。

*1:正確には苦手というより、食への関心が薄い。

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<古典部>シリーズ第1弾『氷菓』を再読してみた

※この記事は2017年2月15日に加筆されています。

 <古典部>シリーズ最新作『いまさら翼といわれても』を読む前に一度、本シリーズを頭から読み直したかった。

 今年やりたいことに「既読本の再読」を掲げていたこともあり、ちょうど良いと思って『氷菓』を手にとってみた。約5年振りに開いてみるとなるほど、やはりほろ苦い。それでもなぜか不思議な好感が持てる作品でした。

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『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』で微百合とミステリーを楽しむ

 高殿円著『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』を知ったのは、2014年──pixivにて。大好きな絵師さんが「おすすめです」の言葉とともに、萌えを吐き出していたからでした。

 残念な告白を正直に申し上げると本書は百合漫画だと思っていた。その理由のひとつは「百合」タグで紹介されていたから。もうひとつは絵師さんが漫画の同人絵をよく投稿していて、ホームズ&ワトソンのキャラクターデザインが明確だったからです。

 面白そうだな、いつか読んでみたいな……と思いつつ、すっかり忘れてしまって約3年。年末に某大型書店に足を運んだ時、初めて『シャーリー・ホームズ』は小説だと知ったのでした。恥ずかしい!

 欲求と初回配本限定の箔押しカバーに釣られて読んでみると物語としては面白く、次回作に期待せざるを得ない内容でした。

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KJ法の始まり『発想法』を読んでみた

 梅棹忠夫著『知的生産の技術』に興味を持った時に「一緒に読んでおきなされ」と隣に並んでいたのが、川喜田二郎著『発想法 創造性開発のために』だった。

 KJ法を提唱する本書。『知的生産の技術』とほぼ同じく、50年前に初版が発行されたとは思えないほど現代でも通ずる内容で溢れた一冊でした。特段「KJ法を学びたい!」と考えていなくても、情報の整理や問題解決の手順を身に付けたい人は、一読して損はないと思います。

 そして「一緒に読んで」と言われ、Amazonでは「こんな商品も買っています」リストに並ぶだけあるなとも感じた。うむ、本書は『知的生産の技術』と合わせて読んでほしい

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