たわしの帖

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ミステリーの答えはどこに?『愚者のエンドロール』を再読してみた【<古典部>シリーズ第2弾】

 <古典部>シリーズ第1弾『氷菓』に続き、第2弾の再読記事でござる。

 実は『愚者のエンドロール』、本シリーズの中でもっとも苦手な作品です。苦手というか、なんというか……一番胸くそ悪いといいますか、読んだ後に「は?……えぇぇ、マジかぁ」ってなったんですよね。前に読んだとき。

 じゃあ今回、読了後になにを思ったかといえば──やっぱり「マジかぁ」でございます。

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乙一が送る『銃とチョコレート』は苦味たっぷりのビターな児童書

 乙一氏の作品といえば『GOTH』、『暗黒童話』、『暗いところで待ち合わせ』などなど……数多くのタイトルが挙げられる。もし「お気に入りの乙一作品を答えよ」と問われたら、十人十色。比較的バラバラな回答が得られるかもしれない。

 私が気に入っている乙一氏の作品は『変面いぬ。』と『死にぞこないの青』、そして本書『銃とチョコレート』です。

 ジャンルとしては児童書に分類されますが「児童書? なーんだ、お子さまの読み物か」と侮ってはいけません。大人でも十分楽しめる乙一氏らしいダークで、ビター感たっぷりのミステリー小説です。

 バレンタインを口実に再読したけれど、ミルクチョコレートの甘みは一切なかった。そして、やっぱり引き込まれてしまいました。面白い……!

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読書ライフにメリハリをつける「絶対読まない時間と場所」について

 先日の「読書時間」に関する続き。つばささん(id:tsubasa123)より、「期待しています」と仰っていただけたので<絶対に読書しない時間と場所>について、個人的な内容になりますが語りたいと思います。

 前の記事でも申し上げましたが、読書をする時間は個々人の生活リズムや習慣で大きく異なるものです。なので「自分の読書時間やスタイルが絶対だ!」と胸を張るつもりはありません。むしろ私自身、読む時間を必死に捻出してスタイルを模索している奴です。

 ただ、こういう風に読書をしている人がいるんだなぁ……と。主に読むタイミングについて悩んでいる人へ、少しでも参考になれば。ヒントになれば幸いだと考えながら書いています。

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本はいつ、どんな時に読む?私の「読書時間」についてまとめてみた

 まめに読まないと読了できない、遅読家な束子です。以前、1月に読んだ本のまとめ記事のはてブにて、つばささん(id:tsubasa123)から「いつ、どんな時に本を読むのか」とコメントを頂きました。

 コメントに対しTwitter上で以下のような返答をいたしましたが、

改めて「私っていつ本を読んでるかな?」と自分の<読書時間>を振り返ってみたので、まとめておきます。つばささんへの返信も兼ねていますが、本記事が「読書したいけど、いつ読めば良いか分からない!」と悩むすべての人のヒントになれば幸いです。

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甘い絶望を描く『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet』

 ハタチぐらいのとき「小説 オススメ」で検索すると伊坂幸太郎の『アヒルと鴨のコインロッカー』、梨木香歩の『西の魔女が死んだ』、桜庭一樹の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet』をやたら推されたことがあった。

 海外小説ばかり広く読んで、国内小説は山田悠介と乙一が中心だった10代。勧められるまま前2作品は読んだけれど、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』だけは読めずにいました。理由は単純──タイトルから受ける印象がイマイチだったからです。

 砂糖菓子の弾丸って……女の子のサバイバルミステリー? 魔法少女系? 『ルー=ガルー*1』みたいなのだったらどうしよう! と思って積んでいた本書。

 いやいや、読まず嫌いはいかんよ。『少女七竈と七人の可愛そうな大人たち』の作者だし、ラノベ作家から一般文芸作家へシフトチェンジしたきっかけみたいな作品なんだから!

 ──と考え直して読んでみれば、あら不思議。なんとも言い難い悲しさと辛さでいっぱいになってしまった。誰ですか、魔法少女系とか言った奴。……私だ。

*1:京極夏彦著『ルー=ガルー ー忌避すべき狼』。全753ページ中、半分まで進んだところで積んでいる。

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1月に読んだ本をまとめてみた【読書術・ビジネス・エッセイ・小説】

 月10冊、本が読めるようになれたらいいなぁ……と夢物語を浮かべてしまう束子です。

 わざわざ“夢物語”と称した理由は24時間まるまる本の虫になるわけにはいかず、そのうえ遅読家ゆえに「月10冊」は理想論に近いと考えているからです。不可能ではないけれど、なかなかに難しい。

 それでも出来るだけたくさん本を読みたい私。今年から<読書目標>をつけるようになりました。今回は目的などを含め、備忘録としてまとめておきます。

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ディジョンマスタードを食べ比べてみた

 読んでいる本に食べ物が出てくると、なんとなく「私も食べてみたいなぁ」という気持ちになる。食欲が湧くのとは違う。「本当にそういう味がするのかしら」と好奇心が湧いて、ちょっとだけ味わってみたくなるのです。

 この好奇心は買い物中にも顔を出すもので、「そういえば、あの本に載ってたな」と唐突に思い出します。現に、輸入食品を扱うスーパーでフランス産のマスタードを見かけた際には『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』を思い出した。

 その夜のサラダは、セン切りのキャベツ、うす切りのきゅうりに玉ねぎ、それにかいわれ菜が入っていた。「マスタードのおいしいのを使うのがコツ」だそうだが、フランス人はマスタードが好きである。ディジョンという町は、マスタードの町といわれるが、マスタードの大工場があり、世界各国に輸出している。このディジョンのマスタードは味がよくて、一度使ったら他のものは使えなくなってしまう。
石井好子著『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』P.166より引用

 一度使ったら他のものは使えなくなってしまうなんて……本当だろうか。というより、マスタードにこだわったことがない違いを考えたこともなかった

 ディジョンマスタードとは、どんなものかしらん。──興味が湧いたので、2つのディジョンマスタードを実食。ついでに比較してみました。

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『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』をおいしく読んだ

巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(以下『巴里』)の姉妹本『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』(以下『東京』)を読んだ。

『巴里』の後、「暮しの手帖」で執筆していた5年間をまとめた本書。相変わらず美味しそうなにおいが溢れる内容でした。お腹の虫が何度グーッと悲鳴を上げたことか……数えてないので分かりません。料理エッセイではなく飯テロエッセイとするべきである。

 姉妹本なだけあって『巴里』と繋がっている部分に「おっ」とさせられる。そして著者・石井好子女史の変化や、前作を書くに至った経緯なども記されていて興味深い一冊となっていました。

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