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「親切なリサイクル業者」かと思ったら「押し買い業者」だった話

押し買いとは、強引に、なんらかの品を法外な安値で買ったことにして持ち去ってしまう行為のことである。悪徳商法のひとつである。
引用:押買 - Wikipedia

 ということで、「親切なリサイクル業者」かと思ったら「押し買い業者」が家に来た話です。

 「押し買い業者」に遭遇することなんて滅多にないかもしれないけれど、注意喚起と備忘録の意味を込めて書き残しておこうかと。もしかしたら読み進めていくうちに「それ、家にも来たことあるよ」って人がいるかもしれない。

 経験者はいろんな人に話を広めて欲しいです。昔の「押し買い」イメージとは、ちょっと変わってきてますから。

「押し買い業者」にあった経緯

全ては1本の電話から始まった……

 今年の7月──丁度、別サイト「きままりすと」の更新を休んでいた頃のことです。

 某日午後、我が家の固定電話に1本の電話が入りました。対応したのは、ナンプレと海外ドラマをこよなく愛する母(60代)

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 電話でどのような会話をしたのかは不明ですが、母は「一足でも? シーズンとか関係ないんですか?」と物凄く質問していました。あれやこれやを聞いた後に1度通話を切り、再度かかってきた電話で「じゃあ、明日の午後に」という約束を取り付けていました。

 そして、そんな電話対応をBGMにパソコンと向き合っていた私に「束子、アンタ要らないものあるでしょ?」と声をかけてきたのです。

 なんのこっちゃ分からんので詳細を求めると「なんでも買い取ってくれるリサイクル業者が来るから、要らないものを出しておいて欲しい」とのこと。“要らないもの”は服でも靴でも鞄でも、食器でも壊れたAV機器でも貴金属でも本でも、文字通り“なんでも”良いシーズンや流行りも関係ないらしい。

 今思えば「ちょっと怪しいな」と思うのですが、当時は怪しいどころか「なんて親切なんだ!」と思いました。

 というのも、要らないもので溢れていたのです。

 着なくなった服に履かなくなった靴。使わなくなった食器。部屋の隅で埃を被っているAV機器やデスクトップPCなどなど……出来るだけ身軽になりたい! 断捨離したい! という願望もあって、家には不要なものがいっぱいあった。自家用車があれば、それらを積んでリサイクルショップに持ち込むことも出来たのだけれど、残念なことに車がないので「要らないものが溜まっている」状態だったのです。

 だから「要らないものを買い取りに来てくれる(しかも、なんでもOK)」と言われて「とても便利で親切なリサイクル業者」だと感じてしまったのです。

30代前半の男性(巨漢)、来たる

 翌日。約束の時間15分前にリサイクル業者の人が来ました。その人は30代前半と思われる男性で、身長はおおよそ185cmがっちり体型。色黒でメガネをかけていて、やたら愛想がいい、よく喋る人でした。笑顔でお喋りなのが「THE 営業マン」って感じ。

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 私(165cm)は一目見て、デカッ! 恐っ!と思いました。身近な男性が父(173cm)ぐらいの母(152cm)は、私以上に恐怖したに違いありません。

 もともとリサイクル業者からは「品物を見るときに、玄関先のスペースだけ貸して欲しい」と言われていたので、家に上げる気は全くありませんでした。玄関と玄関横の部屋に要らない物のほとんどを出して、待機する我々。

 玄関先に腰掛けた男性は、一番近くの靴から検分し始めました。「可愛いですね〜、どこで買ったんですか?」「これ、流行りですよね! 状態も綺麗だし…本当に売っても良いんですか?」などと言いながら、次々と見ていきます。私は「口がよく動くけど、手もよく動くな」と思いました。それぐらい素早く、あっさり検分していたのです。

 2分ほどで20足の靴を見終えると、洋服に移ります。私たちは靴を退けて、服をまとめた箱を男性の前に移動させようとしましたが、彼は「お構いなく〜」と言って玄関から玄関横の部屋へ、勝手に上がってきました。お構いするのですが、素早い185cmを止める暇がありません。何より恐い。

 40着ほどの服を靴と同じ速さで検分すると、食器類へ──この時、私たちは致命的なミスを犯します。食器は重さがあり、且つ割れ物なので、大半をリビングのテーブルに置いていたのです。私たちは笑顔を浮かべたリサイクル業者(色黒185cm)の侵攻を止めることが出来ませんでした。

 家に上げないどころか、リビングの陥落を許してしまったのです。

リビング陥落後から始まる恐怖

 “要らないもの”たちの検分は5分もしないうちに終わりました。しかし、リサイクル業者の男性は、そこから2時間以上居座り続けました

 居座る理由は、アクセサリーが欲しいからです。

 男性曰く「買い取った服や靴をコーディネートして、セット販売みたいに展示したい。今は夏だから、アクセサリーが一緒になっていると売れ行きが良くなる」のだとか。だから「シルバーか、ゴールドのネックレスが欲しい」と。

 しかし残念なことに、我が家にネックレスはありませんでした。というか、貴金属自体あまり持っていません。何故なら、母と私には金属アレルギーがあるからです。食品を扱う父は貴金属を身につけるどころか、興味も知識もナシ。
 なので、シルバーや純金の貴金属を所持していても最低限しかありません。私も14Kの極細ブレスレットぐらい──しかも、そのブレスレットは常に身につけています。当時も手首につけていました。

 「ネックレス欲しいな〜、金の細いので良いから欲しいな〜」と強請られても、ないものは出せません。私たちは正直に「ネックレスはありません」と言いました。意外だと言わんばかりの表情を浮かべた男性と、しばらく「欲しい」「ありません」の押し問答を繰り返しました。金属アレルギーの話をしても、男性は粘り強くおねだりしてきます。

「夏だからチェーン! チェーンが良い!」
「服と一緒に飾りたい!」
「ネクタイが欲しい!」
「ネックレス、イミテーション、ネクタイピン、カフス、なんでも良い!」
「片方だけのピアスでも良い!」
「石の取れた、壊れたピアスでも良い!」
「切れたチェーンでも良い!」

 壊れたピアスや切れたチェーンを、どうやって服と飾るのかしらん……もうここまで来ると「怪しい」通り越して察します。流石の私たちでも「こいつ可笑しいぞ」と。

 やたらネクタイと貴金属を要求する男性に「ネックレスはない」「あるにはあるけど、売る気はない」とキッパリ言いました。我々は185cmにビビっていても、NOと言える日本人だったのである。

 男性は私たちの「あるにはある」発言を聞き逃さず「見るだけ、見るだけですから!」と、その貴金属を要求をしてきました。「見るだけですから!」と言う姿は、女の子に「先っぽだけだから!」と必死にお願いする残念な男性に似ています。でも、見せませんでした。「先っぽだけだから!」が虚言なように、「見るだけだから!」も虚言だと思ったからです。

 しかし結局、あまりのしつこさにウンザリした母が、片方しかない米粒大の壊れたピアス(14K)と、何十年も前に父が不倫相手の女性から貰ったカフス(恐らくシルバー)を渡しました。

 まだまだ諦めきれない男性が「金なら、こういうのでも良いんですよ!」とジップ付きの小袋に入れられた、10cm程に千切れた赤金色のチェーンを出してきました。が、母の実家は宝石店。「それ金じゃないじゃん。金だとしても、かなり銅が混じってますよね?」とピシャリと言うと、男性は苦笑いしながら2つの貴金属と私の服を4点引き取って帰って行ったのです。

昔の「押し買い」

 「押し買い」という言葉が広く知れ渡るようになったのは、東日本大震災の頃だと思う。
 当時は津波で何もかもが流され、数え切れない物や命が失われてしまったことに多くの人が衝撃を受けた。そして“絆”の名の下に、国内外を問わず支援の手が被災地に伸ばされた。ボランティアとして現地で活躍する人もいれば、募金をする人、支援物資を送る人などなど、いろんな形でみんなが被災者を助けようとした。この記事を読んでる人の中にも、何かしらの支援をした人がいるでしょう。

 その「被災者を助けたい!」という気持ちを狙ったのが「押し買い業者」である。

 「押し買い業者」は高齢者の家を突然訪問し「被災地のために貴金属を売って欲しい」などと言うようになった。リサイクル業者ではなく、医療機器メーカーと偽って「被災者が使うペースメーカーの部品に必要だから、貴金属を提供して欲しい」と言う業者も現れた。終いには高齢者の指から、金の指輪を無理やり強奪する業者まで出現する始末である。

 あまりにも悪質だったので、ニュースで報じられることもありました。当時の私たちは「世も末だな」と思う反面「なんでそんなのに引っかかるのかしらん」と不思議に思ったものです。「支援のために貴金属寄越せって……そんなわけなかろう!」って。

 ──あれから約5年後。
 規制やクーリング・オフ制度の適応が進んで、突撃お宅の貴金属! が出来なくなり、震災支援ネタも使えなくなった「押し買い業者」は「なんでも買い取る親切なリサイクル業者」を掲げて電話アポイントメントをとるようになり、我が家は見事に引っかかったわけであります。なんて間抜けなんだろう。

「親切なリサイクル業者」なんか存在しない

 時々テレビで「なんでも買い取ってくれるリサイクル業者」を利用した、お部屋スッキリ企画を観たりしませんか?
 骨董品でも美術品でもなんでもない、着古された洋服や割れたCD、使いかけの園芸用の土まで、なーんでもOK! 絶対に断られると思っていた物も引き取ってくれて、スッキリした上に臨時収入までゲット出来ちゃった☆ みたいな。そんな企画。

 あれは、usoかもしれないusoジャパンとか懐かしい、知ってる人いるだろうか……。

 否、全部usoとは言いません。もしかしたら、本当に何でもかんでも引き取ってくれる神業者も、存在するかもしれない。

 でも、家に

要らないものはありませんか? 着ない洋服や履かない靴、鞄、貴金属、壊れたテレビやパソコン、食器、自転車、人形、タイヤ、古本……なんでも引き取りますよ。しかも出張費用は無料です!

なんていう電話が来たら、それは高確率で「押し買い業者」だと考えたほうが良いです。何でもかんでも売って金に変えられるなんて上手い話ないんだよなぁ、やっぱり。

リサイクル業者からの電話にNOと言う勇気を持とう!もしも家に呼んでしまっても「貴金属など無い!」とキッパリ言おう!

 繰り返しになりますが、もしも「お家に要らないものはないですか? 何でも買い取りしますよ!」と電話が来たら、即座にお断りしてください。

 即お断り出来なかったら「後でかけ直すので、会社名と電話番号を教えてもらって良いですか?」と言って、電話を切りましょう。そして、GoogleやYahoo!で検索してみてください。何かしら「押し買い業者」だと判断できる情報は出てくるはず。
 ちなみに私は、企業の住所をGoogleマップで調べたら、単身者用の2階建てアパートがヒットしました。

 もしもリサイクル業者を家に呼んでしまったとしても──そして、しつこく貴金属を強請られても、渡したくなければ「貴金属は無い!」とキッパリ断りましょう。毅然とした態度が大事です。脅迫されたりトラブルの予感がしたら「警察に通報しますよ!」と言うのも有りだと思います。

 もういくつか寝れば、大掃除の季節。不要なものがたくさん出てきても、甘い言葉には乗せられぬように気を付けてくださいね。以上、「押し買い業者」に出会ったブロガー束子でした。