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レベルアップしたKJ法指南書『続・発想法』が実例豊富で面白い

 以前に読んだ川喜田二郎著『発想法 創造性開発のために』の続編、『続・発想法 KJ法の展開と応用』を読みました。

 前記事の最後に書いたとおり本書も「『この1冊を読めば、KJ法も情報処理もマスターできる!』というわけではない」。でも、前作よりはKJ法についての情報密度がレベルアップ! ついでに難しさもレベルアップ! しておりました。

 読み応えがすごくて、読了後にちょっとだけ頭がボーッとしたぐらいです。はずかちい。

前作『発想法』と代わらない部分

『続・発想法』で新しく述べられている部分に触れる前に、本書と前作『発想法』で内容がほぼ同じだと感じたところをピックアップしてみませう。

  • 問題提起、情報共有の重要性
  • KJ法を行うための準備と必要な道具
  • 基本的なKJ法のやり方

 大まかに見て上記3点は『発想法』と共通です。ただしより詳しく、そして発展を遂げているから「これ、前読んだわ」感は薄い。

 むしろ同じだと思って読み飛ばしたら、新しいことが混じってて何ページか戻るパターンが何度かありました。続編というよりは、加筆版かな? 調子にのって速読しなければ読了に10日以上かからなかったはず……!

『続・発想法』で展開、応用された部分

 目新しい、もしくは展開、応用を遂げた部分でまず印象深いのが「W型問題解決モデル」です。問題提起から始まり観察や推論、検証などを経て結論を「知識」として取得する過程が解説されています。

『発想法』でも問題提起の重要性や、ブレーンストーミングなどを活用した大小様々なデータ収集の大切さを説いていた。けれども本書は思考レベルと経験レベルの行き来を「W」の道筋を描いた図解付きで可視化し、重要性をさらに力説している。前作の内容に加筆して、よりしつこく(※褒め言葉)読者に訴えてきています。

 KJ法に必要な道具の応用編としては「移動式大学版KJラベル」と「マグネット版」を使った方法を追加。どちらも時間を大幅に使うKJ法をよりスピーディーに、そしてキレイに行えると紹介されています。黒板やホワイトボード上でできる「マグネット版」は、学校や会社でのちょっとした会議で大活躍しそう。

 さらにカード化したアイディアや情報をグループ編成。図解化(「A型図解化」)後、本来なら文章化(「B型文章化」)するところを“おしゃべり”してみる「省略B型」が面白い。

 図解を見ながら──または元にしながら「話し言葉」でまとめる方法は、演説の舞台や人を口頭で納得させる場面で役立ちます

 過去、職場の悪しき慣習を滅するために奮闘し上司を説得した経験がある私としては「『続・発想法』をもっと早く読んでおけば、楽に主張を納得させられただろうな……!!」と思いましたね。なぜ、若かりしき頃に『発想法』と『続・発想法』を読まなかったんだ。

KJ法を知りたいなら、実用例も増えた『続・発想法』を読むべし

 他にも『続・発想法』には、KJ法の4ステップ*1を何ラウンドも繰り返す「累積KJ法」の実例を複数ページに渡って記されています。

 この「累積KJ法」の実例が、一番読み応えがあった。前作『発想法』はそんなに実例がなくて、正直「もう少し実践的な例があっても良いのになぁ」と思ったのだけれど。本書『続・発想法』は、その希望が叶っていた

 図解と文章を照らし合わせるのは、ページを行ったり来たりするからなかなかに大変です。でも、照らし合わせてこそ意味がある

 どうやって図解から文章に変換するかが深く理解できたし、図解化することで如何に楽に文章が生み出せるかが学べたのですから。目から鱗じゃないけど……KJ法ナメてましたね。

 生産的な会議を行うためだけでなく組織内の上下関係や、水平的な部門間での円滑なコミュニケーション。チームワークでの仕事の受け渡し。個人間の相互理解などなど。本書の紹介文やそで*2に記された通り、活用の幅が拡大している印象を受けた『続・発想法 KJ法の展開と応用』。

 本書を読むと「やっぱりKJ法は一朝一夕では無理だな」と肩を落としたくなるが、同時に「マスター出来たら絶対に強みになる」と感じました。少なくとも付け焼き刃程度でも頭に入っていれば、いざという時に「KJ法があるじゃん!」と発想して突破口が開けるかも。

 ブログ記事を考える時でも使えそうですし──難解な本の紹介や、自己主張的な記事では特に。いつもノート上で済ませていた私ですが、この本をキッカケにKJ法を練習してみようかと思わされました。

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*1:1:カード作り、2:グループ編成、3:A型図解化、4:B型図解化

*2:カバーを掛けたときに内側に折り込まれた部分。よく著者のプロフィールなどが掲載されている。