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人間不信になるドラマ『殺人を無罪にする方法』が色々と衝撃的だった

※この記事は2017年1月22日に加筆・修正しています。

 海外ドラマ『殺人を無罪にする方法』シーズン1を観終わりました。

 母に「これ、1話だけ観たけど面白かったよ」と言われ、ふむふむどれどれと観てみると、なるほど確かに面白い。即虜になって「次の話行こう、次!」となりました。

 タイトルからして、なかなかに衝撃だけれど……内容も結構衝撃的。話が進むほど、誰を信じて良いのやら全然分からん。人間不信になる(震え声)。でも、1度観始めたら止められない止まらない。「えっ!」と思わず声が出る、そんなドラマです。

 

 ※本記事には『殺人を無罪にする方法』第1話を中心に、シーズン1のネタバレが含まれています。

 

『殺人を無罪にする方法』とは

あらすじ

「グレイズ・アナトミー」「スキャンダル」の製作陣が贈るリーガル・サスペンス。歯に衣着せぬ物言いで自信家の敏腕弁護士アナリーズがロースクールで教えるのは、ずばり“殺人を無罪にする方法”。証拠隠滅や偽造に脅迫―。どんな汚い手を使ってでも依頼人を無罪放免に導くその冷酷非道な辣腕ぶりを、事務所のインターンに選抜された5人のエリート学生たちが実践を通じて学んでいく。前代未聞のリアルな授業が現実の判決を覆す!

「ディーライフ/Dlife 殺人を無罪にする方法」STORYより引用)

 現在(10月21日時点)、Dlifeにて放送中です。タイトルは原題そのまま「How to Get Away with Murder」が和訳されています。

 1話完結型のドラマですが、全体の内容としては「アナリーズとエリート学生たちが挑む様々な事件」と「女子大生殺害事件」&アナリーズの夫「サム殺害事件」が並行していきます。

 演出の仕方も、ちょっと独特。シーズン前半はサム殺害事件が発生した現在をフラッシュバックで差し入れながら、学生たちがインターンに選ばれた3ヶ月前の話を軸に。そして後半は現在を軸にして、女子大生殺害事件とサム殺害事件の真相を紐解いていきます。

 私の拙い文章では分かりにくいと思うので、頑張って分かりやすくすると……こんな感じ。

シーズン前半中心軸→3ヶ月前。エリート学生たちがアナリーズの「殺人を無罪にする方法」を学び始め、「女子大生殺害事件」が発生する。
フラッシュバック→現在。アナリーズの夫、サムが殺害される。4人のエリート学生たちが、カーペットに包まれた“何か”をどこかの屋敷から運び出している。怪しすぎるってばよ……。

 

 中盤で過去と現在が追いつく。そして入れ替わる。 

 

シリーズ後半中心軸→現在。サムの遺体が発見され、殺人事件として捜査が始まる。終盤に近付くにつれて「女子大生殺害事件」の真相も暴かれていく。
フラッシュバック→3ヶ月前。どうしてエリート学生4人が、屋敷から“何か”を運び出していたのか。一体何をしたのかが明かされる。

 

登場人物(俳優・女優名/吹き替え声優)

アナリーズ・キーティング(ヴィオラ・デイヴィス/五十嵐麗)

 ミドルトン大学のロースクール教授で、超敏腕弁護士。犯罪学を専門に教鞭をとっている。アナリーズの教える内容は「刑法入門」などではなく「殺人を無罪にする方法」。自分が請け負っている事件を実地訓練の教材に使い、辛辣でスパルタな教育をしていきます。スパルタすぎて、彼女を恐れる生徒も。

 特に、インターンのエリート学生には「ちゃんと考えなさい!」「雇って良かったと思わせる仕事をして!!」「私の評判が落ちたらどうするの!?」と、バッシバシのバシで指導していきます。容赦ない。いろんな意味でこわい

 そんなアナリーズには、夫・サム以外の男性とホニャララな関係を持っているという秘密があります。明け透けに言えば不倫です。

ウェス・ギビンズ(アルフレッド・イーノック/新垣樽助)

 インターン生その1、補欠合格でロースクールに入学したので、講義初日は誰もウェスを「エリート学生」とは思っていなかった。多分、同じインターン生は今でも「自分と同じエリート」とは思ってない。その証拠に、コナーからは「おい、補欠!」と呼ばれています。

 自信家、野心家、ナルシスト──評価向上と最優秀者に贈られるトロフィーのことしか頭にないインターン生達の中で、唯一、自分に自信がなくて「成績の為なら何でもする」思考が薄い人物。でも「大人しい奴ほど何をするか分からん」的な発言を引き出させる程の“やる時はやる男”であり、終始侮れない奴ポジションです。

 第1話にて、アナリーズと不倫相手のホニャララなシーンを目撃してしまうウッカリさんっぷりを発揮。あちゃー……。しかし、カーペットに包まれた“何か”を処理する際には謎のリーダーシップを常に発揮しています。

コナー・ウォルシュ(ジャック・ファラヒー/平川大輔)

 インターン生その2、正真正銘エリート学生。ナルシストで、濡れ場担当。しかも、女性相手にではありません。すごいよー、すごいBなLだよー。役者さん凄いなって思った。

 頭脳も優秀ですが、何より凄いのが「証拠集めの為なら何でもやっちゃう」ところです。第1話から、被害者が勤務していた会社のIT社員の男性とにゃんにゃんして証拠ゲット。その後、彼を度々「情報源」として扱います。それだけに止まらず、裁判を有利にするために男を引っ掛けたり、被害者の夫であり容疑者でもある男から「妻と同じぐらい美しい……」と言わしめたりと、魔性っぷりを発揮してくれます。いつからBでLなドラマと錯覚していた?

 冷酷な一面もありますが、やや気弱というか……脆い面もかなりある奴です。その点、必死に隠してるんだろうなぁ。

ミカエラ・プラット(アジャ・ナオミ・キング/近藤唯)

 インターン生その3、正真正銘エリート学生。婚約者持ち。野心家でめちゃくちゃ向上心があり、アナリーズに強い憧れを抱いています。その所為か、トロフィーに対する執着心も凄い。

 憧れのアナリーズが説く「殺人を無罪にする方法」に対して特に疑問も抱かず、どんな小さな綻びからも無罪にする材料を導きだします。誰よりも優秀でいたいが為に、他人の手柄に対してギリィ…とする時もしばしば。入手手段不明(知りたくもないのかもしれない)の有力情報などを持ち込むコニーが只でさえ気に入らないのに、婚約者の件でおちょくってくるものだから、シーズン後半は情緒不安定になりがち。

 強くて優秀な女性を振る舞うけれど、実はすごく脆くて揺さぶられやすい面は第1話からもよく伺えます。インターン生の中では、コナーと似たタイプ(ミカエラは嫌かもしれないが)。

アッシャー・ミルストーン(マット・マクゴリー/小田柿悠太)

 インターン生その4、正真正銘エリート学生。父ちゃんが連邦判事な、ボンボンの坊ちゃん。トロフィーへの執着心に負けず劣らず、「金持ちでイケイケなエリートだぜ、いえあ!!」感が物凄い。自信家で、コニーとは種類の異なるナルシスト。

 坊ちゃんの所為なのか、はたまた独特のキャラクターの所為なのか、それとも唯一カーペットに包まれた“何か”に関わっていない所為なのか、インターン生の中では浮いている印象があります。人によっては、間抜けっぽいって思うかもしれない。でも、悪い奴じゃないよ!

ローレル・カスティーリョ(カーラ・ソウザ/浅野真澄)

 インターン生その5、正真正銘エリート学生。理想主義者。アナリーズの事務所で働いているフランクを目で追っかけてる。

 補欠で劣等生かと思いきや、“やる時はやる”ウェス。濡れ場担当のコナー。野心家で優秀なミカエラ。ぶっ飛んだ坊ちゃんアッシャーという面々の中で、あまり個性が際立たない印象がありますが、ローレルは間違いなくウェス寄りの人間です。他のメンバーが気付かなかったことに気付いたり、コニーとミカエラがテンパってる時に逆に冷静だったりします。割と合理的・利己的なのかな?

 ただ、あんまりにもフランクを目で追いかけるから「この人、何のためにアナリーズの弁護士事務所に居るの?」と思いたくなる時も稀にあり。

レベッカ・サッター(ケイティー・フィンドレイ/豊口めぐみ)

 ウェスの隣人。大学近くのバーで働いていて、鼻にピアスとか開いちゃってる。デスメタル好きそう。実際に第1話では、大音量でデスメタルな曲を流して、ウェスから「うるさい!」と苦情を受けてます。

 見た目も言動も、エリート学生とは真逆の世界に生きているような人。「女子大生殺害事件」の被害者の恋人と思しき男性と、自宅で口論しているなど、とりあえず事件に何らかの形で関係しているのは確か。

フランク・デルフィノ(チャーリー・ウィーバー/花輪英司)

 アナリーズ弁護士事務所の従業員。立派な髭を蓄えたイケメン。ローレルからの熱視線を受けていて、そしてしっかり意識している(同僚のボニーとの話だと、遊び人っぽい)。

 アソシエイトかパラリーガル*1かな?と思いきや、法律に関する仕事はしてないような……。でも、何かとアナリーズに頼まれごとをされている。ぶっちゃけ謎の人

ボニー・ウィンターボトム(ライザ・ウェイル/小林未沙)

 アナリーズ弁護士事務所のアソシエイト。フランクが何でも屋的に頼まれ事をされているのに対し、ボニーは法律関係の仕事の一切を割り振られています。お堅そうで、ちょっと幸の薄そうな印象。でも、気は強そうだなぁ……って感じ。

 上司であるアナリーズが強い所為か、何やら劣等感のようなものを抱いているからなのか、常に何かを言い淀んでいる。あと、アナリーズの夫・サムに好意を寄せている。サムにかける声とテンションが、明からさまに違ったりしてます。不貞の予感しゅごい。

ネイト・レイヒ(ビリー・ブラウン/楠大典)

 地元警察の刑事。スキンヘッドのマッチョ。アナリーズの不倫相手はコイツです。

サム・キーティング(トム・ヴェリカ/星野充昭)

 アナリーズの夫。心理学の教授を務めていて、「女子大生殺害事件」の被害者とは教師と教え子の関係だった。……けど、絶対それだけの関係じゃない臭がしゅごい。あと、自宅兼事務所のキーティング邸で、ボニーと見つめ合っちゃったりする。不貞の予感しゅごい。「女子大生殺害事件」の3ヶ月後、何者かに殺害されます。

ライラ・スタンガード(メーガン・ウェスト/中田沙奈枝)

 「女子大生殺害事件」の被害者。第1話冒頭では行方不明者として捜索されていたけれど、自身が暮らす女子寮の貯水槽で遺体として発見される。

 『殺人を無罪にする方法』の魅力

 『殺人を無罪にする方法』の魅力は、なんじゃろか。何でこんなに面白いのかしらん。ちょっと考えてみる。

「依頼人が本当に無罪かは、どうでも良い」──非勧善懲悪なストーリー

  リーガルドラマというと、弁護士がいて、被告人(依頼人)がいて、刑事裁判なら検察官がいて、弱きを助け強きを挫くようなストーリーが多いものです。検察官メインで描くなら悪である被告人を有罪にするべく扮装し、弁護士メインで描くならば被告人(依頼人)の無罪を証明する為に躍起になる。もしくは刑期を軽くする為に交渉する。

 もちろん時には敗訴になることもあるけれど、基本的にはメイン側が善の立場にいる、“勧善懲悪”のスタンスが揺らぐことはありません。

 しかし、『殺人を無罪にする方法』には、勧善懲悪がありません。もっと言えば、悪も正義もない。

 依頼人が本当に無実かは、どうでも良い。

 依頼人が無罪になれば、それで良い。ただそれだけ。

 なので、アナリーズは「絶対にコイツ犯人だろう」「限りなくクロだろう」という人だって、依頼人の利益になるならば絶対に無罪を勝ち取ります。まあ、依頼人が私利私欲に走ったり、その為に自分たちを利用しようものなら弁護を降りたりもしますが……。

 現実にも「絶対にコイツ犯人だろう」って人の無罪を得る為に奮起する弁護士っていますよね。アナリーズは正に、そんな弁護士を忠実に描いたようなキャラクターのように思えます。

アナリーズが教える『殺人を無罪にする方法』

 エリート学生を含め、ロースクールの生徒達に教える『殺人を無罪にする方法』の掟は、以下の3つ。

  1. 証人の信用を落とすこと
  2. 新たな容疑者を提示すること
  3. 証拠を埋没させること

 証人の信用を落とす為なら、どんな手だって、時には体って使う。新たな容疑者になりうるなら、依頼人の身内でさえも提示する。証拠を埋没させる為なら、自分の大切な人を陥れたり利用だってする──全ては、依頼人の無実の為。それがアナリーズの『殺人を無罪にする方法』です。

 さらにさらに、裁判を有利に進められるように陪審員を精査するだけでなく、個人の偏見や価値観をも利用して自分達の味方にならなさそうな人を、あらゆる手段で陪審員から除外させるor陪審員を解散させるのです。正直言って「ここまでする!?」と言いたくなる所業ばかり。無罪の為なら限りなく黒に近いグレーゾーンを突っ走ります。

 だが、それがいい。

 リーガルドラマで「1.証人の信用を落とす」「3.証拠を埋没させる」シーンはよく見られるものです。例えば「アルコール依存症で、今も依存は治っていない」とか「証拠隠滅(もしくは捏造)を働いた過去がある」などの経歴が明るみになれば、証人の信用は無くなるし証拠能力も失われます。

 ですが、そのマイナス情報をどこから仕入れてきたのか。どのような経緯で手に入れたのかは、案外詳しく描かれていないものです。描かれていたとしても「調べたら出てきました」とか「知人に探りを入れたら……」とか、その程度。

 『殺人を無罪にする方法』では、どんなにエグくても、情報を手に入れた経緯を受け手である視聴者に見せてくれます。そして上記の3つは、「女子大生殺害事件」「サム殺害事件」でも大いに活用され、がっつりねっとり絡んできます。本作品を観るときは、掟をきちんと念頭に入れて観ると楽しめますよ。

絶対に何かやっちまったエリート学生4人

 第1話冒頭のフラッシュバックではウェス、コニー、ミランダ、ローレルが森の中で取り乱しながら「遺体を隠すか、そのままにするか」「血の付いたトロフィーをどうするか」などを話し合います。もう、会話の内容からして、何らかの殺人事件に関係している──しかも当事者に近いのは確かです。

 優秀な弁護士になるために躍起になっていたエリート学生たちが取り乱し、大き過ぎる罪に苛まれ、恐怖からの自己防衛を図りながら証拠隠滅を行う過程は見ものです。中心軸とフラッシュバックを繋ぐ伏線も多く張り巡らされているので、ドラマを観ながら自分も推理に参加できるのが◎でしたね。

話が進むほど驚かされる──「えっ!!」連発の展開

 ここまで読めばお気付きかもしれませんが、『殺人を無罪にする方法』 に登場する人達は、何らかの秘密を抱えているor隠しています。なので、みんな嘘つき。終盤にはメインメンバーが全員、互いを疑いまくっています。もう誰も信じられぬ状態。

 しかし、最も「誰も信じられぬ!!」と叫びたいのは視聴者の方です。話が進むたびに、真相が明かされ──「えっ!!」と思わず声が出る、予想外すぎる展開が巻き起こるのですから。もう、ウェス達もアナリーズも、他の人も信じられない。推理が覆されるし、なにより人間不信になる。つらい、楽しい。

まとまった時間がある時に一気観して欲しい『殺人を無罪にする方法』

 引き込まれる内容も勿論ですが、かなり良いテンポで話が進んでいきます。海外ドラマ初心者な人やリーガルドラマに慣れていない人も、無理なく楽しめるのではないでしょうか。

 というか、並行している2つの事件のお陰で、リーガル:サスペンスの割合が丁度50:50な感じなんですよね。シリーズ後半は、サスペンス要素がやや強め。なので「法廷ものはビビッと来ないけど、サスペンスはだーい好き!」という人も、大いに楽しめる作品だと思います。

 連休や、まとまった時間がある時に、一気に最終話まで駆け抜けて欲しい。そんなドラマです。2015年9月24日には、アメリカでシーズン2が放送されているらしいけど、日本ではいつ見られるのやら……早う、シーズン2早う。

 2017年1月21日より、シーズン2がDlifeにて放送開始されました!

www.dlife.jp

 

*1:「アソシエイト」「パラリーガル」とは:弁護士事務所内の役職名。事業主である「パートナー」に雇われている弁護士が「アソシエイト」、弁護士のアシスタントが「パラリーガル」である。因みに、本作で「パートナー」の立場にいるのは、言わずもがなアナリーズです。